
第6回は、平成16年10月23日に「自然農法と健康」というテーマで開催しました。
ゲストは綾町で自然農園を営んでいらっしゃる黒木幸一さんでした。
黒木さんは、 山之口町生まれ。
前職はご夫婦とも東京都庁職員。東京下町(荒川区)生まれの奥様ともども農業をやりたいということで全国に場所をもとめて綾町にたどり着き、41歳の時に都庁を退職(いわゆる脱サラ)して移り住むことになったそうです。
黒木さんは「黒木自然農園」という養鶏中心の農園で生計を立てていらっしゃいます。
黒木さんは、「安心安全な作物を作るには良質な肥料と水が大事。良質な肥料は安心安全な作物を飼料として育った健康な家畜(鶏)のふんとその土地の土着菌によって作られる。それが循環型農業であり、我々はそれを実践している。人間も同じでそこにあるものを食べて、色んな智恵を総動員していけば健康に生きていける。そういう考えを若い世代に継承していきたい」と語りました。
右写真下は、黒木自然農園の卵「AC美卵」です。レモン色に近い黄身(写真はやや濃く撮影されています)の回りにプルンとした黄色がかった白身がとりまき、その回りに透明な粘りけの少ない白身が取り巻いている、3層がはっきり分かれた卵です。この卵での「卵かけご飯」は最高でした(黒岩)
このときの様子が宮崎日日新聞2004年11月23日号のくらし面に掲載されました。こちらでご覧いただけます。
10月23日に開催された第6回の風と木の会は綾町で黒木自然農園を営んでいらっしゃる黒木幸一さんをゲストにお招きしました。
黒木幸一さん
山之口町生まれ。
前職はご夫婦とも東京都庁職員。
東京荒川区生まれの奥様(紀子さん)ともども自然農業をやりたいということで10年ほど前から全国に場所をもとめ、9年ほど前に現在の綾町竹野に決められました。理由は温暖で、人が温かく、生活コストが安いため。ご自身も宮崎出身ではありますが、条件に合えばどこでも良かったとのことで、たまたま宮崎に良いところがあったということだそうです。
以下、お話しの詳細です。(文中“私”は黒木さん)
【黒木自然農園】
綾の北川の最上流にある竹野という集落に住んで9年になる。もともと農家だった家に“居抜き”で住んでいる。
養鶏専業農家である。1個50円の卵を売って生活している。(詳しくはこちら「ほめられっぱなしで、あてにされる卵を届けて」をご覧下さい)
平飼い(放し飼い)で180羽の鶏を飼っている恐らく日本一小さい養鶏専業農家だと思うが、卵は九州一安心安全な卵だと思っている。
また米も自給+副収入源として作っているが、これも宮崎一安心安全な米だと自負している。
水稲は水が肝心であるが、綾町と言うところは日本一の照葉樹林が水を漉してくれるので良質の水を田んぼにひくことができる。しかも、上流に行くほど水の質は良い。自分たちは最も上流で完全無農薬+合鴨農法で米作りをしているので良い米ができる(1kgあたり700円で販売)。
野菜も少し作っているが、これも綾町で一番安心安全な野菜だと思う。それは、肥料に自分の鶏の鶏糞のみを使っているからだ。(使ったことがないので市販の農薬の名前も知らない)ただし、商品になるような野菜はまだ作れていない。市販の農薬を使わず、土を作ることから始めて9年になるが、まだまだである。
しかし、大規模にやろうとすると肥やしも買わなければならず、そうなると中身を保証できない。うちの野菜は畑で土が付いたまま食べることができる。それは土そのものにどういう物が含まれているか分かっているからだ。(自然の土に自前の鶏糞。その鶏糞も元のえさを全て自分たちで作っている・・循環型農業)今はまだ商品にはならないが、この先何年かかけて土ができてくると必ず良い野菜ができるようになると信じている。
自分たちはそういうことができる竹野という土地に住み、山間地文化の継承を目指したいと思っている。
【暮らしについて】
農業をやっていたら(体を使うので)モノを食べなくてはならない。モノを食べるためにキツイ農業をやっているようなものである。うちのような形態の農業はやってみると本当にハードで、2人で死にものぐるいで働いてやっと月に20万円ほどの収入になるが、それも再生産費用(農機具などにかかる費用)を含んでである。早く年金暮らしになって温泉付き別荘でも住みたい(笑)早く歳を取りたいと願っている(笑)しかし、今の暮らしそのものはとても楽しく満足している。
食べると言えば、うちでは「あるモノを食べる」というのが基本である、今年の夏はにがごり(ゴーヤ)がたくさんできたので、毎日のように食べた(笑)。これから寒くなるが、冬はソバをよく食べる。店で食べるソバは大体一人前100〜120gだと思うが、それでは食べた気がしない(それでいて値段はけっこう高い)。うちでは二人で800gは食べる。
ところで、ソバの一番おいしい食べ方はそばがきだと思う。シンシンと寒いときに腹をへらして温かいそばがきを噛まずに飲み込む。食べるときには必ず立って食べる。そうするとそばがストンと腹に入る。そういう食べ方がその一番うまい食べ方だと思う。
農業をやっていて暮らしていくためには農作物を売らなければならない。ただし、うちのような規模と形態の農業をやっている場合は、人に売ってもらうようなことをしていると売値が高くなってしまってダメである。従って、全て直売りをしている。個人宅への販売が50%である。関東、関西、九州各県にも宅配で個人売りをしている。うちの卵はアレルギーがある人でも食べられるようで、口コミやメディアに取り上げられた効果などもあり比較的安定して売れている。自分たちでも宅配をしているが、宮崎市内では霧島地域までで、それより東の人は霧島まで来てもらっている。農家は野良仕事に最も時間を費やさないと良い作物を提供することができないので、販売のために使える時間を考えるとそこまでが限界かなと思っている。
【循環型農業について】
うちでは、藁などを50〜60cmの厚みで敷き詰めた上で鶏を育てているが、その植物の繊維が鶏糞に混じって土着菌が繁殖し、(その土地にあった)良い肥料になる。最近よくEM菌(乳酸菌や酵母、光合成細菌などを集合させた液体状の生物群)などによる肥料作りが注目されているが、EM菌もよそから来た菌である。本当に自然なものを作るためには土着菌を使うべきだと思う。そこにあるものを活かすということが大事である。それによって、ウソ偽りのない安心安全なものを提供できる。
畜産は穀物を肉として凝縮したもので、元の穀物から見るとエネルギー量は半減している。つまり、穀物そのものを食べる方が効率的なのである。したがって、うちでは畜産には最大限クズものを利用するようにしている。これは別の見方からも理にかなっていて、家畜の健康のために大事ないろんなものの微量要素をたくさん摂取させることにもなる。ただし、飼料は自然の摂理に従った完全循環型でないといけないと思っている。つまり、直接のもの(例えばBSEで問題になっているような牛に牛の肉骨粉を与えるなど)は論外と思っている。
タンパク源として与える飼料の代表的なものに魚粉があるが、ほとんどが輸入物で元がどういうものであるか分からない上に熱処理してあって臭い。宮崎にはイリコ業者が多いので、うちはクズイリコを利用している。最初の頃は蚕糸試験場に行きサナギをもらってきていたが、なかなか手に入らなくなってきた頃にイリコにたどり着いた。
飼料は一羽当たり1日に120g必要であるが、200羽いると1年間に10トンの量になる。鶏の数がこれ以上増えると飼料も輸入物に頼らざるを得なくなるのでうちはこの小さい規模でやっているのである。
ヒヨコも薬剤フリー(無投与)で育てている。ヒヨコのえさにチックフードというものがある。これは“地上最強の栄養食”といわれる薬剤(抗生物質)入りのえさであり病気をさせずに育てることができるが、成長したときに内臓が十分育たず弱いトリになる。これは卵の質や量に直接影響が出る。うちは自前でヒヨコのえさも作る。中身は、玄米、イリコ、よもぎ、にんにく、しょうが、とうがらし、梅、らっきょうなどのエキス、おおばこ、どくだみ、げんのしょうこ、からむしなどの緑汁を加えた特性ひよこ練りえさである。
このえさで育ったヒヨコは皆丈夫で死なない。成長すると質の良い卵をたくさん産むようになる。
そして、健康なふんをし、それが穀物のわらや土着菌と混じって良い肥料ができる。その肥料100%で健康な作物を作り、またその作物のクズを飼料にする。それが循環型農業である。
人間も同じ、そこにあるものを食べて、色んな智恵を総動員していけば健康に生きていける。そういう考えを持った若い世代が我々のような生き方を継承してくれればと思っている。
黒木自然農園
〒880-1302
宮崎県東諸県郡綾町大字北俣3281
Phone/Fax:0985-77-3835